トランプ関税の影響、7月のコアCPIに反映
2025年7月の米国コア消費者物価指数(CPI)は、市場予想をわずかに上回る結果となりました。背景には、トランプ大統領が発動した関税の一部コストが消費者価格に転嫁された影響があります。
今回の結果を受け、市場ではFRB(米連邦準備制度理事会)による9月利下げの可能性がさらに高まっています。
CPI発表直後、S&P500先物は上昇に転じ、インフレ懸念よりも利下げ期待が投資家心理を支える展開となりました。
6月からの変化と市場の読み違い
ウォール街は6月のCPIで、自動車を除くコア商品価格が前月比0.5%上昇し、約2年ぶりの大幅上昇を記録したことを受け、7月はトランプ関税の影響がやや緩和すると予想していました。
しかし実際には、コアCPIは予想を上回り、特にサービス分野のインフレが加速しました。
意外だったのは、航空運賃が前月比4%上昇し、2年ぶりの大幅上昇を記録した点です。これによりサービスインフレ率が押し上げられ、トランプ関税の直接的な影響では説明しきれない結果となりました。
品目別の価格動向
品目ごとの動きを見ると、物価上昇は一様ではありません。
- 主要家電製品:前月比 2.2%下落
- 衣料品:前月比 0.1%上昇
- 新車:横ばい
- 中古車・中古トラック:前月比 0.5%上昇
物価の変動幅が大きい食品・エネルギーを除いたコアCPIは前月比0.3%上昇で予想通りでしたが、前年比では3.1%上昇と市場予想の3.0%を上回りました。
トランプ関税前の駆け込み輸入が影響
今回のCPIデータには、トランプ大統領の関税発効前に駆け込み輸入が増加した影響も表れています。小売業者は在庫を抱える形となり、値上げを先送りするケースが多発しました。
6月の統計では、スポーツ用品や玩具が前月比1.8%上昇するなど、関税の影響が鮮明でしたが、7月は一部品目で落ち着きを見せつつも、サービス分野では上昇圧力が続いています。
CPI全体の結果とインフレ動向
7月の総合CPIは前月比0.2%上昇し、予想の0.2%と一致。前年比では**2.7%**と横ばいで、予想の2.8%をわずかに下回りました。
一方、コアCPI(食品・エネルギー除く)は前年比3.1%上昇し、依然としてFRBのインフレ目標2%を上回っています。
この結果は、トランプ関税の影響が一部緩和されつつも、サービス価格の上昇が物価全体を押し上げていることを示しています。
利下げ観測の高まり
CPI発表前から市場は、**9月17日のFOMCで利下げが行われる確率を82%**と織り込んでいました。
5月・6月の雇用統計では雇用者数の増加率が大幅に下方修正されており、景気減速懸念が強まっています。
現在の市場予想では、
- 年内50ベーシスポイント(0.50%)の利下げ確率:85%
- 年内75ベーシスポイント(0.75%)の利下げ確率:42%
となっており、インフレ率がやや高止まりしている中でも、FRBは景気下支えを優先するとの見方が広がっています。
投資家への影響と展望
1. 株式市場
トランプ関税の影響は依然として残るものの、CPIが予想を大きく上回らなかったことで、米国株は短期的に安定しています。特に金利低下が追い風となるグロース株やハイテク株に注目が集まる可能性があります。
2. 債券市場
インフレ率が高止まりしているため長期金利の低下は限定的ですが、利下げ観測が強まることで短期金利の低下が進む見通しです。
3. 為替市場
FRBの利下げ観測が強まれば、ドル安圧力がかかりやすくなります。特に円やユーロに対してはドル売りが進む可能性があります。
まとめ:トランプ関税とCPIの関係は複雑化
- トランプ大統領の関税は一部品目で価格上昇を招きつつも、駆け込み輸入や在庫調整で物価上昇圧力は限定的に。
- 7月のコアCPIは前年比3.1%上昇で予想を上回ったが、主因は航空運賃などサービス価格の上昇。
- 市場は**9月利下げ確率82%**と見込み、金利低下期待が株価を下支え。
- 関税がインフレ率に与える影響は短期的に不安定で、FRBの政策判断にも難しさを増している。