
米国株市場に新たな緊張感
8月最終週の米国株は、インフレデータが予想通りだったにもかかわらず下落して取引を終えました。その背景には、ドナルド・トランプ大統領によるFRB理事リサ・クック氏の解任をめぐる攻防が市場心理を冷やしたことがあります。中央銀行の独立性をめぐる論争が再燃したことで、投資家は先行き不透明感を強めています。
一方で、主要株価指数は月間ベースでは上昇を維持。インフレ率が大きくぶれなかったことから、9月の金融政策に対する過度な警戒は和らいでいます。しかし「政治リスクと金融リスクが交錯する局面」であることは明白であり、米国株市場は難しい舵取りを迫られています。
インフレデータ:予想通りの着地
7月のインフレ指標は市場予想とほぼ一致しました。
- 総合PCE(個人消費支出)物価指数:前月比+0.2%、前年比+2.6%
- コアPCE価格指数:前月比+0.3%、前年比+2.9%
- 個人消費支出(PCE):前月比+0.5%
- 個人所得:前月比+0.4%
これらの数値は、FRBがインフレ鈍化を確認するうえで重要な判断材料です。市場予想と一致したことで「追加利上げ圧力は強まらない」との見方が広がり、米国株にとっては支えとなりました。
トランプ大統領とFRBをめぐる攻防
トランプ大統領は、FRB理事リサ・クック氏を解任しようと動いています。ワシントンD.C.で行われた法廷審問では、クック氏が解任の一時停止を求めましたが、判決は持ち越し。ジェローム・パウエルFRB議長は、最終判断が下されるまでクック氏を留任させるよう要請しました。
中央銀行の独立性は、金融市場の信頼を支える大前提です。大統領が直接FRB人事に介入する構図は、「政治が金融政策を左右するのではないか」という懸念を強めます。この不透明感が米国株の上値を抑える要因となりました。
株価指数の動き
週末の米国株市場は以下の通りです。

- ナスダック総合指数:1.2%下落。週ベースでは小幅安。ただし月間では+1.6%、年初来+11.1%。
- S&P500指数:0.7%下落。過去4週間で初めての下落だが、月間では+1.9%。年初来では+9.8%。

- ダウ工業株30種平均:0.3%下落。月間では+3.2%で最高値圏を維持。
- ラッセル2000指数(小型株):0.5%下落。ただし月間では+7%超。

銘柄別では、キャタピラー(CAT)が3.6%下落。

エヌビディア(NVDA)が3%以上下落と大型株に売りが出ました。21日移動平均線(濃い青)がサポートにはなっていないですね。50日移動平均線(水色)がサポートになるかどうか。2025/5以降は50日移動平均線を切ったことはないので短期的には下降トレンドを意識してしまいますね。
半導体関連の弱さがナスダック全体を押し下げています。
市場に残る「二つのリスク」
今回の米国株の動きを整理すると、投資家が抱えるリスクは大きく二つに分かれます。
- インフレと金融政策リスク
- PCEインフレ指標は予想通りだが、依然として2%目標を上回る水準。
- FRBは利下げに慎重姿勢を崩さないとみられ、長期金利の動向が株価の重荷に。
- 政治リスク(トランプ大統領の影響)
- FRB人事介入は「中央銀行の独立性」への懸念を生む。
- 2024年以降の大統領選に向け、トランプ氏の発言や政策スタンスがボラティリティを高める可能性。
まとめ
インフレデータが予想通りだったことで、米国株市場は本来であれば安心感を得られる場面でした。しかし、トランプ大統領によるFRB人事介入という政治リスクが浮上し、投資家の慎重姿勢が強まりました。
9月には雇用統計をはじめとする新たな経済指標が発表され、FRBの利下げ議論に直結する可能性があります。さらに、大統領選に向けてトランプ氏の発言力が高まる中、「米国株はインフレと政治リスクの二重の波をどう乗り越えるか」が焦点となりそうです。