【米国株】ウォーレン・バフェットの投資哲学は変わったのか?2025年Q2のポートフォリオ変動を徹底分析

スポンサーリンク

投資の神様として世界中の投資家から崇拝されるウォーレン・バフェット氏。彼が率いるバークシャー・ハサウェイ(BRK.B)の動向は、常に市場の注目を集めています。長年にわたり「バイ・アンド・ホールド(買って永久に持ち続ける)」という投資哲学を貫いてきたバフェット氏ですが、近年そのポートフォリオは活発に変動しています 。  

2025年第2四半期(4月から6月)の最新のポートフォリオ開示では、一部の主力銘柄を売却する一方で、意外なセクターの銘柄を新たに組み入れるという、大胆な動きを見せました。これは、彼の投資哲学の変化を意味するのでしょうか。

本記事では、最新のポートフォリオデータに基づき、バフェット氏の取引の意図を深掘りし、その変化の背景にある戦略と、彼が今見据えている未来の展望を読み解いていきます。

2025年第2四半期のポートフォリオ動向:売却と新規購入の全貌

BRK.b 日足

バークシャー・ハサウェイのポートフォリオは、2025年第2四半期にいくつかの大きな変化を遂げました。年初来で8%強上昇している同社の株価は、その戦略が奏功していることを示唆しています 。  

主力銘柄の売却:アップルとバンク・オブ・アメリカをなぜ売ったのか?

最も注目を集めたのは、バークシャーのポートフォリオにおける主要な保有銘柄であるアップル(AAPL)とバンク・オブ・アメリカ(BAC)の売却でした 。  

  • アップル(AAPL): 2016年から保有し、ポートフォリオの20%以上を占める最大のポジション 。バフェット氏の代名詞とも言える銘柄ですが、第2四半期中に2,000万株以上を売却しました 。この売却は、同社のバリュエーションが上昇しすぎたため、利益確定を行ったものと見られています 。バフェット氏の投資哲学は、市場のタイミングを計るのではなく、「適正価格で質の高い銘柄を見つける」ことにあります 。株価が急騰したアップルは、この基準から見て割高と判断された可能性があります 。  
  • バンク・オブ・アメリカ(BAC): バンク・オブ・アメリカもまた、大幅に保有株数が削減されました 。これもアップルと同様に、金利低下期待で株価が上昇し、バリュエーションが高くなったことが主な理由とされています 。  

その他、バークシャーはダビタ(DVA)やベリサイン(VRSN)の保有を減らし 、特にTモバイル(TMUS)は全株を売却しました 。これらの売却は、ポートフォリオの再調整と、高くなった市場に対する警戒感を示していると言えるでしょう。  

意外なセクターへの新規投資:ベアキラーとしてのバフェット

売却が警戒感を示す一方で、新規に買い入れた銘柄は、バフェット氏の強気な見通しを物語っています。

  • ユナイテッドヘルスグループ(UNH): 最大のサプライズは、ヘルスケア大手のユナイテッドヘルスグループへの新規投資でした 。同社は、規制上の懸念や運営上の問題で株価が下落していた時期でした 。このタイミングでの購入は、まさに「他人が恐れる時に貪欲になれ」というバフェット氏の逆張り哲学を体現するものです 。  
  • ニューコア(NUE): 米国最大の鉄鋼メーカーであるニューコア(NUE)への投資も注目に値します 。バフェット氏が製造業・工業セクターに積極的に投資するのは珍しく、これは、米国国内のインフラ整備や関税による国内産業保護といった構造的な追い風を評価したものと考えられます 。  
  • 住宅建設セクター: レナー(LEN)とDRホートン(DHI)という米国の二大住宅建設企業にも新規ポジションを設けました 。これは、今後の米国住宅市場に対する強い信頼の表れと言えるでしょう 。  
  • その他の新規購入: そのほか、屋外広告大手のラマー・アドバタイジング(LAMR)や、セキュリティ製品を扱うアリージョン(ALLE)といった、米国内経済に密接に関連する企業にも投資しています 。  

変わらぬ中核的優良銘柄

KO 日足

活発な売買の一方で、彼のポートフォリオの中核をなす銘柄は揺るぎません。コカ・コーラ(KO)やアメリカン・エキスプレス(AXP)といった長年保有し続けている銘柄は、今回もそのほとんどを維持しています 。また、シェブロン(CVX)やコンステレーション・ブランズ(STZ)、プール(POOL)といった既存のポジションもさらに増やしています 。これは、彼の「バイ・アンド・ホールド」哲学が依然として健在であることを示しています。  

バフェットの投資哲学は本当に変わったのか?

今回のポートフォリオ変動は、一見すると「長期保有」の原則から外れたように見えるかもしれません。しかし、詳細に分析すると、彼の根本的な投資哲学は変わっていないことがわかります。

バフェット氏は、株価の短期的な動きを予測することは不可能だと常々語っています 。彼の成功の秘訣は、市場価格がその本質的価値よりも低いと判断した企業を見つけ、そこに資金を投じるというシンプルな戦略にあります 。  

  • アップルとバンク・オブ・アメリカの売却: これは、両社が不健全な企業になったからではなく、株価がその本質的価値を上回っている、あるいは少なくとも割安感がなくなったと判断したためと推察されます 。  
  • ユナイテッドヘルスグループの購入: 株価が低迷していたタイミングで投資したのは、市場の恐怖によって一時的に企業価値が過小評価されていると判断したためでしょう 。これは、彼の「逆張り」戦略の典型例です 。  
  • 鉄鋼・住宅への投資: 鉄鋼メーカーや住宅建設業といった景気循環に敏感なセクターへの投資は、今後の米国経済の力強い回復と、政府のインフラ投資などの長期的なトレンドを見据えたものと解釈できます 。  

これらの動きは、市場のセンチメントやトレンドに流されるのではなく、企業の本質的な価値と長期的な成長ドライバーを見抜くという、バフェット氏の揺るぎない哲学に基づいています。

まとめ

ウォーレン・バフェット氏の2025年第2四半期のポートフォリオ変動は、多くの示唆に富んでいます。

  • 「バイ・アンド・ホールド」の進化: 彼の哲学は、単に一度買ったら売らないということではなく、「適正な価格で質の高いビジネスを長期保有する」という原則に忠実であることだと再認識できます。価格が高騰しすぎたと感じれば、利益確定を行う柔軟性も持ち合わせています。
  • 市場の恐怖を機会に: ユナイテッドヘルスグループの購入は、市場が悲観的になっている時こそ、優良企業を安く買うチャンスがあることを教えてくれます。
  • マクロトレンドの評価: 鉄鋼や住宅といったセクターへの投資は、個別の企業だけでなく、マクロ的なトレンド(インフラ投資や国内回帰など)を考慮することの重要性を示しています。

彼の行動は、市場のノイズに惑わされず、長期的な視点とファンダメンタルズ分析に基づいて、冷静な投資判断を下すことの重要性を私たちに教えてくれています。