
2025年、トランプ前大統領の再登場によって、米国株式市場は新たな転機を迎えつつあります。とくに注目されるのが、AI(人工知能)関連の政策とテクノロジー企業への影響です。今回の記事では、トランプ政権のAI行動計画が米国株、特にNVIDIAやブロードコムなどの半導体銘柄にどのようなインパクトを与えるのかを中心に整理します。
AI政策は米国の株式市場にプラスとなる
トランプ大統領の掲げるAI政策は、米国のテック株にとって明らかに追い風です。具体的には、データセンターの建設支援やAIチップ産業の強化を通じて、NVIDIA(エヌビディア)やAMDといった米国半導体企業に大きな成長機会を提供する構図が見えてきます。
インフラ支援と輸出政策が企業業績に直結
トランプ大統領のAI行動計画では、以下のような施策が盛り込まれています:
- データセンターおよび半導体工場の建設許可の迅速化
- AI関連の需要が高い職種の育成促進
- 同盟国向けへのAIフルスタックパッケージの輸出調整
これらの取り組みは、供給能力の拡大と輸出市場の拡張につながります。特に注目されるのが中国向けのAI関連製品の規制緩和。UBSのアナリスト、ティモシー・アルキュリ氏は「中国へのコンピューティング能力輸出制限が最終的に解除されれば、NVIDIAやAMDにとっては500億ドル規模のAI市場を獲得するチャンスになる」と述べています。
AI銘柄と米国株の具体的動向
実際にトランプ氏のAI戦略や業界動向を背景に、主要銘柄の株価はすでに敏感に反応しています。
- NVIDIA(NVDA)
GPU(グラフィックス処理ユニット)で世界をリードするNVIDIAは、AIチップ需要の中心に位置。株価は1.7%上昇し、史上最高値に迫る水準(173.74ドル)で取引を終えました。主力製品「Blackwellシリーズ」がAI処理能力で評価されており、今後の需要拡大が期待されます。 - ブロードコム(AVGO)
GoogleやMeta向けにカスタムAIチップ(ASIC)を供給するブロードコムは、過去最高値に迫る288.71ドルで終値を記録しました。こちらもAIインフラ需要の受益企業です。 - Alphabet(GOOGL)
Googleの親会社であるアルファベットは、AIアプリケーションの拡大を背景に、2025年の設備投資見通しを750億ドルから850億ドルに引き上げ。さらに2026年にはさらなる増額も予定しており、2024年の設備投資実績(前年比63%増)からもAI分野への本気度がうかがえます。 - Shopify(SHOP)
トランプ政権下で始まった関税強化にも柔軟に対応し、Shopifyは「Tariffguide.ai」などのAIベースの関税最適化ツールを提供。AIは製造業だけでなく、eコマースにも波及効果を及ぼしています。
米国株全体への影響:景気敏感 vs ハイテク
トランプ大統領の政策は、AI銘柄にとっては好材料である一方、関税政策や外交リスクの再燃が懸念される点もあります。たとえば、2024年2月に関税強化が始まったことを受けて、貿易銘柄には圧力がかかりました。
また、インテル(INTC)は第2四半期決算で予想外の損失を計上し、7%以上の株価下落を記録しています。このように、個別銘柄の選別がますます重要になる局面です。
来週の注目決算
日付 | 企業名(ティッカー) | 決算時間 | セクター | 注目ポイント(分析視点) |
---|---|---|---|---|
7/28(月)前場 | Boeing(BA) | BMO | 航空・防衛 | 防衛予算や商用機受注の回復度、供給チェーン注視 (Interactive Investor) |
7/28(月)前場 | PayPal(PYPL) | BMO | フィンテック | キャッシュレス取引動向とヨーロッパ規制の影響 |
7/28(月)前場 | Procter & Gamble(PG) | BMO | 消費財 | インフレ下での価格転嫁力、マージン推移 (Interactive Investor) |
7/28(月)前場 | Spotify(SPOT) | BMO | メディア・配信 | 有料会員数の伸びと広告収益動向 |
7/29(火)前場 | UnitedHealth Group(UNH) | BMO | ヘルスケア | 保険利益率とメディケア収入の推移 |
7/29(火)アフターマーケット | Booking Holdings(BKNG) | AMC | レジャー | 旅行需要の回復トレンドとガイダンス |
7/29(火)アフターマーケット | MARA Holdings(MARA) | AMC | 仮想通貨 | ビットコイン価格連動決算とマイニングデータ |
7/30(水)アフターマーケット | Starbucks(SBUX) | AMC | 消費・飲料 | 中国市場の回復度、新メニュー戦略 |
7/30(水)アフターマーケット | Visa(V) | AMC | 金融 | ファンディング量・手数料率、新興市場動向 |
7/30(水)アフターマーケット | ADP(ADP) | BMO | ビジネスサービス | 雇用市場トレンドと人件費変動の影響 |
7/30(水)アフターマーケット | Etsy(ETSY) | BMO | EC | 出店者数推移と手数料収入、消費動向への感応度 |
7/31(木)前場 | Ford(F) | AMC | 自動車 | EV/内燃機関売上比較、価格戦略と利益率 |
7/31(木)アフターマーケット | Meta Platforms(META) | AMC | テック・SNS | 広告収入とメタバース関連支出動向 |
7/31(木)アフターマーケット | Microsoft(MSFT) | AMC | テック・クラウド | Azure成長率と企業向け支出、AIモデル導入進展 |
8/1(金)アフターマーケット | Apple(AAPL) | AMC | テック・ハード | iPhone出荷台数、サービス収益、為替影響 |
8/1(金)アフターマーケット | Amazon(AMZN) | AMC | EC・クラウド | AWS収益伸びと物流コスト、Prime会員動向 |
8/1(金)アフターマーケット | Nvidia(NVDA 未記載) | ただし近接日に注目 | AI・半導体 | GPU需要、データセンター契約動向を注視 |
来週は**7月28日(月)〜8月1日(金)**に、テック、金融、消費財、医療、旅行と多様なセクターで決算が集中。
特にMicrosoft、Meta、Apple、Amazonなどの決算は、AIとクラウド関連で市場全体に影響を与える可能性が高い。
金融・フィンテック銘柄は消費者動向や金利環境、規制変化を読み解く上で重要な指標となる。
消費財・旅行・ヘルスケア分野は、インフレ耐性や消費回復の実態を反映する決算として、景況感の読み取りに役立つ。
結論:トランプ政権下で「米国株の選別相場」が本格化
トランプ大統領の再登場は、米国株式市場にとって大きな変化の兆しです。AI政策の恩恵を受けるテック企業はさらなる株価上昇が見込まれる一方で、他のセクターは政策の影響を見極める必要があります。
AIチップやデータセンター関連の企業は、トランプ大統領の政策に支えられて業績が伸びる可能性が高いため、今後の成長ストーリーに注目すべきです。
一方で、インフレや利上げ、関税などマクロ要因による波乱もあり得るため、投資先の分散と適切なリスク管理は必須ですね。
- トランプ政権のAI政策は、米国株とくにAI関連銘柄にとって追い風となる。
- データセンター整備・輸出規制緩和など、成長を後押しする構造がある。
- NVIDIAやブロードコムの株価が上昇、Googleは大規模投資を決定。
- AI銘柄への中長期的な投資妙味が増す中、リスク管理をしつつ戦略的に動くことが重要。