(会社に)明日から来なくていい!と言われたら【えっ?行かないでいいの?】

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「君さ~ こんな簡単な仕事もできないなら”明日から来なくていいよ”」

って、パワハラ上司において最強レベルの発言。(状況によっては一発パワハラとはならない可能性もありますけど)

面白いことに、この台詞に対して地裁レベルですが2019年、一つの判決がでました。

はたして仕事に行かなくてもいいのでしょうか。

(会社に)明日から来なくていい!と言われたら【えっ?行かないでいいの?】

明日から来なくていい・・・発する状況、立場、意味にもよりますが次の状況から発せられたケースにおいて判例がありました。

登場人物

訴えた人:A B

訴えられた人:会社

明日から来なくていい発言した会社の人事部長 E

状況

ざっくり要約すると・・・

原告Aが面談を行い、給与や労働環境について人事部長Eに求めた。

このタイミングでEはAに退職勧告を行ったがAは拒否した為、”じゃあ明日から出社しなくても結構”というような内容を伝えた。

原告Bとも同日面談を実施した際、BはAの解雇が納得いかない旨、Eに伝えた。

Eはこれに対してBに退職勧奨を告げたがBはこれを拒否した為、Eは”明日からこなくていい”と告げた。

結論

明日から来なくていいというコメントに対する結論はこちら。

Aに対する解雇は認められない。

Bとの合意退職も認められない。

出勤しなくなったのはEからの指示となるため、働いていなくても賃金請求権は失わない

詳細

詳細はこちら・・・

裁判所は次のとおり述べて、Aに対して解雇を言い渡したとは認められないし、Bとの間での合意退職も認められないと判示しました。また、出勤しなくなったのは人事部長からの指示であって、その後、働いていなくても賃金請求権は失わないとの判断を示しました。

(判決文の引用)

「原告AとEは、同年5月3日に面談を行った。その内容は、給与計算などについての被告の対応やその他労働環境について、原告AがEに対応を求めるものであった(甲8の1、8の2、弁論の全趣旨)。これ以上に、Eから原告Aに勤務態度を改めるように求めたことは認められない。」


「原告AとEは、同年6月30日に面談を行った(争いがない)。この際、Eは、原告に退職勧奨を行ったが、原告Aは拒否した(甲9、原告A 8頁)。さらに、Eは、原告Aに対して、翌日から出社しなくて結構である旨発言した(甲9、原告A 8頁)。これ以上に、Eが解雇の意思表示をしたことは認められない。」


「原告BとEは、同日、原告Aとは別に面談を行った(争いがない)。Eは、原告Bに、原告Aは辞めることになったが、原告Bには引き続き勤務してほしいと述べた(争いがない)。」


「これに対し、原告Bからは、原告Aを解雇することについて納得がいかないと述べると、Eから、退職勧奨を告げられたが、原告Bはこれを拒否したところ、翌日から来なくてよいと言われたというものである(甲10、原告B 6頁)。これ以上に、同日に、原告Bと被告が退職合意した事実は認められない。」


「後日、被告から、原告Bに送付された同年8月8日付の退職証明書では、退職理由『退職勧奨』との記載がなされている(争いがない)。」


「原告Aの解雇については、Eが、原告Aが、他の従業員に対して、自己の給与や体制についての批判があり、これがやまないので、同年5月3日に注意したと述べる。確かに、同日の面談内容については、社長(F)の事務処理について不満を述べていることはあるが、特に、Eから原告Aに対して勤務態度について是正を求める内容はなく、会話の前後にかかる指摘をした可能性はないとはいえないが、逆に、そうだとすると、雑談をするような状況であったとは解されないことから、同日に、Eが、原告Aに対して勤務態度を改めるように指示した事実は認められない。また、そもそも、Eがどのような苦情を誰から聞いたのかについても、同人の記憶で述べるにとどまり(E 9、10、16から18頁)、また、結局、セクションリーダーと称する3名から伝聞的に聞いたに過ぎず、具体的な事実の把握としては不十分である。」


「また、Eは、同日以降週1回程度、原告らと面談を実施したというが、原告らは面談の事実自体も否定する(原告A 21、22頁、原告B 9頁)ほか、何等の面談記録等も残っておらず(E 18頁)、被告の体制を批判する者に対する対応としては、不自然であるといわざるを得ない。また、原告Aを解雇するについて、同年6月30日の1週間前のミーティングで決定したというが、何の書面も作成せず、他にこのような決定をしたことを裏付ける証拠もないので、そもそも、このような経過があったのかも明らかではないといわざるを得ない。」


「また、Eは、陳述書では、原告Aに対し、解雇を伝えたというが、当法廷においては、1か月分支払うので、辞めてくださいという話しはしたが、これに対して原告Aは、厳しいですねと述べ、Eはさらに、ただ、1か月分支払わせてほしいと述べたに過ぎない(E 13、14頁)のであり、原告Aに対して明らかに解雇を伝えたこと自体も認められない。」
「いずれにせよ、被告が、原告Aに退職が合理的と認められる事情を収集し、これに基づいて解雇を言い渡したとは到底認められないのであり、解雇の意思表示自体が認められないというべきである。」

「Eは、同日、原告Bとも面談をしたこと、この際、原告Aは辞めることになったが、原告Bには引き続き勤務してほしいとの希望をしたことは争いがない。」

「原告Bによれば、Eから原告Aは辞めてもらうことになったからと告げられたところ、原告Bから原告Aを解雇することは納得がいかないと告げると、それならば、原告Bにも退職勧奨すると告げ、これを拒否すると、翌日から来なくてよいと言われたというものである(甲10、原告B 5、6頁)。」

「Eは、陳述書では、原告Bから、原告Aを解雇するのであれば、退職すると述べたという(乙1)。一方、当法廷においては、原告Bから退職の申し出を受けたので、翌日確認したと答えたが、その後、代理人の質問に対して当日口頭で確認し、後日、他の役員に報告した上で、受け付けたという書面などは提出していないと述べる(E 22、23頁)など、主張が一貫せず、また、同人らの対応を裏付けるような証拠としては、後日の退職証明書は存するものの、原告Bが現実に就業できておらず、やむを得ない面も認められるから、これを重視することはできず、同人の証言のみから退職合意を認めることはできない。」

「そうすると、原告Bについて退職合意があったことは認められない。」

以上の経過に照らすと、被告から、原告Aに対する解雇の意思表示は認められないし、被告と原告Bとの間の退職合意があったとも認められない。また、原告らが出勤しなくなったのは、Eからの指示によるものと認められるから、その後、原告らが現実の労働をしていないとしても、賃金請求権を失うことはない。

弁護士 師子角允彬のブログ

まとめ

ちょっとシンプルにまとめすぎているかもしれませんが、明日からこなくていいという発言にどういった意味がこめられているのか確認できる状況であるなら確認したほうがいいです。

それが解雇の意味なのか、明日から休みなさいという待機の意味なのか、それともパワハラなのか。

言った人によっても意味が異なるのでしょうけど、一つの判例として頭の片隅においておくと良いかもしれませんね。

何かあった場合はやはり相談する。というのが大切かと思います。

参考資料としてこちらを参考にしてみてください。

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